【アメリカ】スペイン語の国歌??【ヒスパニック】
アメリカでスペイン語版のアメリカ国歌が登場した。歌詞の一部は変更され、編曲もされており、批判の声も上がっている。
アメリカ国歌は1931年の制定以来、その地位を守り続けてきた。
ところが、このほどラテン系のポップスターが集合して、アメリカのスペイン語人口に向けて、「ヌエストロ・イムノ(われらが国歌)」と題するスペイン語の歌詞の国歌をレコーディングし、先週末からラジオなどで広まり始めている。
歌詞の一部は変更され、編曲もされている。
音楽プロデューサーは「原曲同様のパッションと尊厳があるよ」と話した。
しかし、「愛国的」かどうかについて、元の歌詞を書いた詩人のフランシス・スコット・キーさんのやしゃごは「よそ者が来て、国歌を変えるなんてとんでもないことだよ」と疑問だという。
発案した音楽プロデューサーは、不法移民の扱いなどが政治問題化する中で、「移民たちにエールを送ろう」と考えたということだが、ブッシュ大統領が「国歌は英語で歌うべきだ」と発言するなど、批判の声も上がっている。(FNN)
正直言って衝撃を受けた。確かにまだ国が認めたわけではないし、ミュージシャンが勝手に集まって作ったものに過ぎないわけだが、アメリカのヒスパニック化の深刻さを改めて認識したからだ。
何も知らない人は「どうせシャレで作っただけだろ」などと思うに違いないが、決してそうではない。それは大統領までもが「国歌は英語で歌うべきだ」と発言しなければならないことからも明らかである。そしてこの問題の背景にはアメリカの一部地域におけるヒスパニック化がある。
それではヒスパニックとは何か?これは主に中南米からやってきた主にスペイン語を話す移民の総称である。アメリカは移民の国であり、昔から世界中の様々な地域から人が集まってできた国である。だから、その中に中南米出身者がいても何ら不思議ではない。アメリカ社会に溶け込めば、彼らもきっとアメリカで仲良く幸せに暮らしていけるに違いない。
しかし、それはあくまでも「溶け込めば」の話である。ところが彼らヒスパニックの多くは決してアメリカ社会に溶け込むことはない、いや、そもそも彼らには「溶け込もう」という意思すらない、と一部のアメリカ人は考えている。
ヒスパニックの最大の特徴はその人数の多さだ。地図を見ればすぐ分かるが、アメリカは西南部でメキシコと国境を接している。物理的には徒歩で国境を越えることも可能だ。しかもメキシコと違ってアメリカは世界一の経済大国。当然仕事も多い。人口増加率もメキシコはアメリカよりもずっと高い。これで人が流れ込まない方がおかしい。
これは、東京都が独立国家だったと仮定して考えてみれば分かりやすい。東京としては人手が欲しいだろうし、周辺地域の人は仕事が欲しい。いくら国が「来るな!」といったところでそれを止めることなどできるわけがない。
そして実際にヒスパニックはアメリカ国内に流れ込む。合法的な入国だけでなく非合法な方法でも流れ込む。地図を見れば分かるが、アメリカとメキシコの国境線は長い。↓
http://ja.wikipedia.org/upload/a/aa/WorldMap_ja.png
ぱっと見た感じでは東京―福岡間よりも長い。この長い国境線を、完璧に見張ることなど不可能だ。最近はコヨーテとかいう密入国の手引きをするものもあるらしい。
こうして、大量の移民が流れ込む。しかし非合法でアメリカに来た者に、まともな仕事があるはずもない。そこで彼らは違法か、違法スレスレの低賃金の仕事につく。そして一般のアメリカ人とは別のコミュニティーを形成し、完全に自己完結した社会を形成していく。実際こうしていくつかの街では英語が全く通じなくなっている。
それでも、単に社会の最底辺でこのような変化が起こるだけならまあそんなに問題もないだろう。しかしそうではない場合もある。その典型的な例がフロリダである。
フロリダはカリブ海にひょっこり突き出た半島である。この半島の目と鼻の先にはキューバがある。このキューバからフロリダにも、大量の移民が流れ込んでいる。
フロリダに住むヒスパニックの中で特に重要なのは、カストロ政権時代に訪れた経済的に裕福な難民である。彼らはフロリダで主に金融関連の事業を起こした。そして中南米諸国の資本を引き付け、今やフロリダは中南米経済の中心である。そのため、フロリダのヒスパニックはもはやフロリダというローカルな次元においては支配層になっているといって良い。
キューバはフロリダと地続きなわけではないから、メキシコの場合ほどメチャクチャな移民流入はないわけだが(それでも多い)、問題はその影響力である。はっきり言って、100万人の労働者が流入するよりも、100人の銀行頭取が流入する方が社会に与えるインパクトは大きいに決まっている。
こうしたヒスパニックの増加は、現在アメリカの支配層であるWASPにとっては脅威である。彼らはスペイン語を話すだけでなく、宗教的にはカソリックが多い。アメリカの伝統的な信念とも衝突する。
今現在日本人の多くは「アメリカは英語を話す国」と認識しているが、数年後、あるいは数十年後にスペイン語もアメリカの公用語になった場合を考えてみればいい。それがいかに巨大な社会的変化かが分かるはずだ。
いや、その変化は既に起こりつつある。それが今回の「スペイン語国歌」に結びついているのであり、アメリカに進出した日本企業で「英語を一生懸命勉強したのに、スペイン語を話す人が多いから困ってしまった」という笑えない話も既にある。
しかしそれだけですめばまだいい。というのは、もともとアメリカ西部はスペインの植民地だった土地である。地名にもサンフランシスコとか、サンアントニオとか、スペイン語の地名が多い(サンとは英語ではセント=聖)。ヒスパニックの中には「ここはもともと我々の土地」などと思っている人もいる。もしかしたら将来的にはヒスパニックが独立運動を起こし、アメリカがアングロ=サクソンの国とヒスパニックの国に分裂する可能性も、ないとは言えない。
これらのことも考慮に入れれば、アメリカにおけるヒスパニックの動きというのは今後のアメリカに重大な影響を及ぼす可能性を持っているのであり、今後も注意して見守っていかなければならないことなのである。



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